ドッグ・ショウ

ドッグ・ショウの意義


ドッグ・ショウは何の為にあるのか、と言う事を考えてみると、それは犬種保存の為に他なりません。スタンダード・ブリーディング・ショウイングは犬種向上の為には欠かせない重要な要素であり、犬種の理想像であるスタンダードを作出する為には、可能な限り良い個体を残して行こうと努力し続けなくてはなりません。その評価を客観的に問う場がドッグ・ショウなのです。そして犬種保存の為のショウである以上、ブリーダー、オーナーの努力は無論の事、その犬種に詳しい優れた審査員が数多く存在するかどうかも、重要なポイントになります。

スペイン、並びにヨーロッパのショウ ・システム
スペインではドッグ ・ショウは大きく Exposicion と Concruso に分れています。Exposicion は更にInternacional と Nacional に分れており、獲得出来るタイトルが違います。

EXPOSICION

INTERNACIONAL CACIB インターナショナルCH
NACIONAL CAC ナショナルCH


そしてCACIB はCertificado de Aptitud al Campeonato Internacional de Belleza de la FCI(FCI認定国際美犬CH資格適正証)の略であり、CAC と言うのは Certificado de Aptitud al Campeonato Nacional de Belleza (国内美犬CH資格適正証)の略です。FCI とはベルギーに本拠を置く国際蓄犬協会の略で、CACIBを管轄し、スペインはRSCE(Real Sociedad Canina de Espana スペイン王立蓄犬協会)が、CACを管轄します。
Concurso は各州のケンネル ・クラブが管轄するもので、各州のCHタイトルを取得できます。

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グループ分け


まず、自分の犬種がどのグループに属しているのかを調べます。FCIが規定しているのが次の10グループです。現在ダルメシアンはグループ6に属しています。かつてはグループ9の愛玩犬に属しており、フランスは昨年までこのクラスでしたので、フランスの大会でグループ戦になると、ダルメシアンの他は全て小型犬で、小人国のガリバーみたいな感じがして、気恥ずかしかった覚えがあります。

グループ1 牧羊犬、牧畜犬 
グループ2   ピンシャー、シュナウザー、モロシアン、スイス牧畜犬
グループ3 テリア 
グループ4 テッカ―(ダックスフンド)
グループ5 スピッツ、および原種タイプ
グループ6 嗅覚犬、追跡犬、および似た犬種
グループ7 鳥猟犬
グループ8 猟犬、およびウォーター・ドッグ
グループ9 愛玩犬
グループ10 ハウンド種


クラス分け


ショウに参加するには、まずクラスを選ばねばなりません。ヨーロッパ各国のケンネル ・クラブはFCIに加盟しているので、その規定に従っています。イギリスは英国ケンネル ・クラブが独自の規定を持っており、非常に細かくクラス分けがあります。スペインでは以下のようにFCI規定を採用しています。

A チャンピオンクラス

スペイン、もしくはFCI加盟国のチャンピオンの称号を有するもの。CACIBのみ選出。

B オープンクラス

15ヶ月以上のもの。CACが取得でき、優勝者はCHクラスでCACIB選出に参加できる。

C 労働クラス

15ヶ月以上で、労働証を有し、能力テストで公認許可を得ているもの。

D 中間クラス

15ヶ月以上24ヶ月未満のもの。優勝者はBとCクラスの優勝者とCAC選出に参加できる。既にCACを有するものはCHクラスのCACIB選出に参加できる。

E ベテランクラス

8歳以上のもの。CHクラス、オープンクラス、もしくは労働クラスに同時に参加はできない。

F ヤングクラス

9ヶ月以上18ヶ月未満のもの。

G パピークラス

5ヶ月以上9ヶ月未満のもの。

H ベビークラス

3か月以上5か月未満のもの。

I カップルクラス

同じ種で、同じ所有者のオス・メスのカップル。

F ブリーダークラス

同種、もしくは異種で、同じブリーダーによる3匹以上のグループ。

まずこの中のクラスを選び、オス、メスで更に分れます。通常はオスの審査が先でメスはその後です。大きなクラブ大会では通常100匹は参加するので、同じ審査員の場合だと午前がオス、午後はメスと時間帯を分けたり、オス、メス別な審査員が審査 (この場合はある程度時間差を設け、重要なオープンクラスなどは両方見られるよう時間配分を考慮する) をしたりします。またワールド大会など規模が大きい大会では、パピークラスは完全に別な場所で、別な審査員による審査が行われる場合もあります。
中間クラスは新しく設けられた制度で、まだオープンクラスでCACを狙うには早いと考える場合に、こちらに出す事があるようです。ですが、中間クラスもオープンクラスも同じく15ヶ月から参加できるので、ある程度のレベルに達している犬なら直接オープン・クラスに出すのが普通です。

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ショウへの参加


まず申し込みをすると参加証が送られてきます。それを見せて参加者入り口から中へ入ると、獣医師による簡単なチェックがあります。通常はワクチン接種が正しく行われているか、マイクロチップが装着されているかを調べます。小さな大会ではワクチン接種の確認のみですが、ワールド大会等では1匹ずつ健康状態のチェックがありました。

次に受付で参加証を見せ、参加番号とカタログを受け取ります。カタログはグループ別になっており、更にオス、メス、参加クラスと小分けされています。当日参加する犬の血統書名、血統登録番号、ミクロチップ番号、両親の血統書名、ブリーダー名、オーナー名、ダルの場合スポットの色(黒か茶か)が書かれています。パピークラスは見習い扱いの為か、カタログの最後に別に纏まっている事が多いようです。

受け取った番号を胸や腕につけ、出番まで待機します。

ショウイング


ヨーロッパではオーナー・ハンドリングが一般的です。特にダルメシアンの場合、プロのハンドラーに依頼して出陳するケースは少ないようです。ブリーダー=オーナーというのが一般的ですし、ブリーダーが自分の所で作出した仔を、オーナーに代わって出すというケースも多く見られます。 まずクラス毎に全頭がリングに上がり、ポーズを取ります。そして次に1匹ずつ審査員の前に行き、再度ポーズを取りじっとしていなければなりません。審査員は全体のバランスを見、犬の前方に立ち指を動かして反応を見ます。動きに対し喜びの表情を見せる事も大事なポイント。尻尾を股に入れていると性格的に「シャイ」というマイナス・ポイントになります。審査員は歯並びを調べます。まず噛み合わせが最も重要視され、次に欠歯が見られます。ドイツ、スイスなどのドイツ語圏は欠歯に対し厳格な立場をとっていますが、その他の国では噛み合せが重要であり、1~2本の欠歯はあまり問題視されません。続いて腰を抑え、十分な運動により身体が出来ているかを見ます。運動の足りない仔は腰が砕けるのです。オスの場合は睾丸を触り、ちゃんと陰嚢が垂れているかをチェックします。

次にリンク内を走り、その動きをプレゼします。丸く走るか、三角形に走るかは審査員、もしくはリンクの広さなどによって変わります。続いて直線を往復します。審査員の所へ戻り、最後にもう一度ポーズを取り評価を待ちます。

最近ハンドラーが犬に触れてポーズを決めさせたり、自らが寄り添って首と尻尾を持ってプレゼするようなシーンを見かけるようになりましたが、ヨーロッパではプレゼの際にダルの身体に触れるという事はあまり好まれません。ハンドラーとダルとの信頼関係により、より自然にゆったりプレゼする事が重要とされており、イギリスでは特にその傾向が顕著です。

クラブ大会のオープンクラスになると、20数頭が出る為2時間近くに渡りリンクの中で立ち続けている事があります。イギリスではリンクに上がる前の自然にしている姿を見る事が、審査員にとってはより重要だとも言われています。ですから性格的にシャイだったり攻撃的な面がある場合、また動きが良くない場合など、リンクに上がる直前までゲージに入れておいて見せたがらないハンドラーもいます。

評価


Exposicion では、Excelente(優秀)、Muy Bueno(優良)、Bueno(良)、Suficiente(可)、Insuficiente(不可)、Descarificado(否)の評価に分かれます。

パピー・クラスではMuy Bueno(優良)が最も良い評価になります。これはパピーの場合、血統が良ければある程度の評価が得られるのは当然の事であり、良くなるのも悪くなるのも今後の育て方次第という面が大きいからでしょう。

無論、審査員の嗜好に左右されるのですが、それは各国の嗜好にも繋がります。スタンダード枠ということは最低限の事であり、そこに嗜好がプラスされる訳ですが、スタンダードも国毎に多少の違いがあるので、ヨーロッパでは審査員が何処の国の人かを知った上で参加を決めるのも重要です。
たとえばイギリス人審査員の場合、基本的にスポットは左程に重視されず、まず全体のバランス、骨格の出来具合、そして性格が一番のポイントになります。フランスはやや小振りでスポットの少ない色白が好み。イタリア、東欧はかなり小ぶりですし、ドイツはがっしりとした体型で歯並び重視、等といった風に国毎の好みの差はかなりあります。

現在、イギリスが6ヶ月の検疫制度を廃止(ただし公的機関による6ヶ月間の狂犬病の為の血液証明書が必要)した為、クラフト展に海外の犬が参加出来るようになり、またイギリスの犬もヨーロッパの大会に気軽に参加出来るようになりました。その為に、イギリス系のスタンダードが再び重要視されるようになって来た様に思われます。クロアチアやイタリアなど、かつて小型ダルが主でしたが、今回のヨーロッパ大会に出陳してきたのは、イギリス系の血統を取り入れたものが多かった様に思います。またアメリカのブリーダーにとっても、本場イギリスのダルは重要視されています。

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チャンピオンタイトル

スペインCHタイトルを獲得する為の条件


1) 3人の異なった審査員によるCACを4つ、クラブ認定大会においてエクセレントを取得する事。4つのCACのひとつはマドリッド・インターナショナル本大会のものである事。

2) 3人の異なった審査員によるCACを4つ、マドリッド・インターナショナル本大会においてエクセレントを取得する事。4つのCACのひとつはクラブ認定大会のものである事。

3) これらのCAC、及びエクセレントはスペイン・ケンネル・クラブ認定のものでなくては算定されない。
スペインを始めヨーロッパ諸国では、国のケンネル ・クラブ主催のチャンピオン ・ポイント大会、もしくはクラブ大会で必ずCACを取得しなければなりません。メスの場合ヒートという問題がある為、この2つの大会に行き違ってしまうと、どんなに優良な犬でも必須CAC、もしくはエクセレントが取れず、時間がかかる場合があります。そういう意味では、オスの方が出陳し易いと言えるでしょう。

まず上記の条件にあったCACが揃ったところで、RSCEにCACのコピーを添え、認定を依頼します。1ヶ月ほどすると仮認定賞が送られて来て、数ヵ月後にチャンピオン証を受け取る事ができます。このチャンピオン証を受け取って初めて、CHクラスに参加できます。

CHクラスではCACIBを狙います。無論オープンクラスからもCHクラスを打ち破ってCACIBを獲得する事もあります。CHクラスには、インターナショナルCHのタイトルの為に外国のCHが参加してきます。インターナショナルCHの為には、CHタイトル保有国の他に、2カ国以上の異なった国でのCACIBが必要です。つまり合計で3カ国以上のCACIBを取らなくてはなりません。スペインの場合、主に2つの方法があります。スペイン、ポルトガル、そして南だとジブラルタル(英国領)、北だとフランス、イタリア。イタリアは小型ダルが主流なので、私たちの系統から行くとほとんど勝てる見込みはないので参加しません。ジブラルタルよりフランスでCACIBを取る事の方が、競争率としては高いと言えるでしょう。逆にスペインのCACIBを取りに来るのは、やはりポルトガル、フランス、イタリア等からですが、バルセロナ ・インターナショナル大会は、地理的条件からフランス、イタリア勢が多く参加します。ですがフランスは北スペインのバスク地方等も近く、フランス勢にとってはあちらの方が取りやすいようです。

インターナショナル・チャンピオンの為のFCI規定


1) 最低1年と1日以上の期間における3つの異なった国における、3人の異なった審査員によるCACIBを4つ獲得する事。

2) 最初のと最後のCACIBの期間は、次のような例に則らなくてはならない。例・1996年1月1日から1997年1月1日。

1)と2)のCACIBは、FCIに認定されたドッグ・ショウに於けるものでなくてはならない。
さて、3カ国以上のCACIBが取得出来たら、それらのコピーをFCIの本部(ベルギー)に送り、インターナショナルCHの認定を依頼する事になります。CACIBはFCIが管轄しているので、CACIB証自体も各国のケンネル ・クラブではなく、FCI本部から送付されてきます。

もう一度ショウの意義を問い直すと…


確かにドッグ・ショウは犬種保存の為には必要なシステムですが、ショウに出陳する犬のみを「優良な犬」とする事は間違いです。ショウを優劣の順位を決める為だけのものと考え、CH犬を持っているオーナーが、あたかも自分を重要な人物の如く考える事も、誤りです。全ての犬はまずペットであり、愛すべき家族の一員でなくてはなりません。家族の一員である愛犬を誇りを持って自らがプレゼする、という形がショウの本来あるべき姿であり、そこで生まれた多くの仲間との交流によって、更により良い犬種向上を図るという事が、本当のドッグ・ショウの意義であると、私は考えています。そういう意味からも単犬種クラブの存在は大きく、派閥思考等に囚われない広い視野での活動が望まれます。