毛色障害

ダルメシアンにおいてスタンダードと呼ばれるのは、短毛でブラックかレバー(茶)のスポットである。その他の毛色や長毛のものは、スタンダードとは云われない。ここでは幾つかの毛色のバリエーションと長毛タイプを紹介し、遺伝子との関係を多少説明したいと思う。


ブラック、あるいはレバーのスポット



ブラックとレバーは、同じ遺伝子を持つ犬ではない。黒(遺伝子“B”)は優勢色であり、レバー(遺伝子“b”)は劣勢色である。黒スポットを持つダルたちは恐らく“BB”-黒の純粋種-であり、彼らは劣勢色のレバー遺伝子を持たず、よりスポットの多い黒ダルしか繁殖しない。同じ黒スポットでも、レバー遺伝子をもつ黒ダル“Bb”は、別なレバー遺伝子をもつダルと掛け合わせた場合、レバーを繁殖する可能性がある。レバーは劣勢色であるので常に“bb”であり、黒の遺伝子Bを持たない。レバーとレバーの掛け合わせでは、レバーしか繁殖しないが、“bb”レバーを黒と茶の遺伝子を持つ黒ダル“Bb”と掛け合わせた場合、両方の色が出る可能性がある。レバーが“BB”(純粋黒スポット)と掛け合わせた場合、レバーダルは両方の親から“b”を受け継がねばらないので、黒ダルしか繁殖されない。遺伝子の組み合わせとしては以下のように6通りになる。

1. BB X BB この組み合わせでは、両親ともが純粋黒の遺伝子BBをもつため、仔犬たちは全て純粋黒の遺伝子を持つBBである。

2. BB X Bb この組み合わせでは、両親のうちの片方が純粋黒の遺伝子であり、他方がレバー遺伝子をもつ黒スポットである。仔犬は全て黒スポット種として生まれるが、50%の仔犬は純粋黒の遺伝子だけを受け継ぐBBであり、残りの50%は劣性遺伝子のレバーbを受け継ぐBbである。

3. Bb X Bb この組み合わせの場合、両親ともにレバーの劣性遺伝子bを持つ黒スポットであるが、先の組み合わせと違い、生まれてくる子供の75%が黒のスポット種、25%がレバー・スポット種である。だが、黒スポットの仔犬のうち25%は純粋黒遺伝子BBであり、残り50%は劣性遺伝子bを持つBbである。そして繁殖の25%を占めるレバー・スポットは全て劣性遺伝子bを双方から受け継いだbbのレバーである。

4. BB X bb この組み合わせでは、純粋黒の遺伝子を持つ黒スポットと、レバーの組み合わせであるが、一方は劣性遺伝子bを持たないBBの為、仔犬は全て劣勢遺伝子bを持つBbの黒スポットとなる。

5. Bb X bb この組み合わせでは其々の遺伝子が組み合わされ、50%の仔犬は劣性遺伝子bを持つ、Bbの黒スポットである。残り50%は劣性遺伝子bbのレバー・スポットである。

6. bb X bb この最後の組み合わせでは両親が劣性遺伝子bbのレバー・スポットであり、仔犬は全てレバー・スポットである。

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レモンカラー


レモンは劣性遺伝子“e”の存在によって生じる。優勢遺伝子のEは暗い色素の拡大したものであり、EEかEeのダルメシアンは黒かレバーのスポットである。(あらゆるBbの遺伝子の組み合わせはキャリーを持つ)劣性遺伝子eを2つ持つと、暗い色素を持たず黄色を帯びたスポット“ee”になる。米国では薄い黄色から明るいオレンジまでをレモンと一般的に呼ぶ。BB、Bb、またはbbかによって、黒かレバーの鼻、及びアイラインを持つ。イギリスでは黒の鼻を持つダルはレモンと見なされる。

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オレンジカラー



このモカ色のダルはオレンジ・スポットと黒い鼻を持つ。レバー・ダルとは常に焦げ茶の鼻をしており、このダルをレバーと間違えてはならない。イギリスではその鼻の色が黒であるがゆえに、オレンジよりはむしろレモンと見なされる。


この仔犬は薄いレモン色のかすかなスポットを持っているが、ほとんど白に見える。レモン・スポットはしばしば非常にゆっくりと出現し、仔犬である為にまだ明瞭には見えない。レモンはバリエーションが多く、ごく薄い黄色から暗めのオレンジ色まで変化する。この仔犬はレバーの鼻とアイラインを持っているが、その鼻の色ゆえにイギリスではオレンジ・スポットと考慮される。

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ブルー、あるいはクリーム


この色は灰色に見えるが、色としては“ブルー”と呼ばれる。
このダルは青灰色のスポット、暗い灰色の鼻を持ち、目は灰色の混合色、及び金色をしている。ブルーは多くの犬種で見られ、黒の遺伝子“B”の機能が弱いために“d”遺伝子の作用によって生じる。このダルの両親は黒スポットとレバースポットであったが、双方から劣性遺伝子“d”を受け継いだ。レバーの場合も同様に劣性遺伝子“d”の影響によって、黄褐色を生じる。
ブルーと言う色はレモンやトリコロールよりも、ダルメシアンにおいては珍しいものであり、スポットの出が非常に弱く色素の質が悪いダル、とは異なっているのを検査することが重要だ。
ブルーと言うのは、スポットの色調、鼻と目の色が、ブルー・ドーベルマンなどと同じであり、遺伝子Dによる。この遺伝子Dは、黒もしくは茶の遺伝子B/bを変え、その色素を希薄にする。
ダルにおけるブルーの場合、遺伝子Dは常に黒を変化させ(つまりddとなる)、遺伝子学的には、ブルー・ダルはB ddである。
理論的には、bb dd(つまり希薄なレバー)も存在する可能性があるが、これらは“クリーム色”、もしくは“ミルクティー色”と呼ばれる。遺伝子Dは常にメンデルスの法則に則っており、ブルーに変化させるためにはd とdの二つの希薄な劣性遺伝子を、双方の親から受けなくてはならない。ゆえに、ブルーの仔犬は劣性遺伝子dを父と母からそれぞれ受け継いだものである。ブルーが出ない全てのダルは、常に遺伝子DDを持つ。
AKCにおいては黒のスポット種として登録され、血統書も発行されるし、AKCではダルのカラーは黒と茶の2つのオプションしかプログラムされていないから、議論も起きないのである。
理論的にはこの遺伝子は同じ数学的可能性を持ち続ける事になる、優勢か劣勢かのどちらかは常にメンデルの法則に従うし、B/b遺伝子と同じである。だが、明らかに誰もこの色の経験をしておらず、もし他のブルー、もしくは片親がDd遺伝子を持つダルと掛け合わさったらどうなるのかは、非常に興味深いテーマである。
また、それらの親がレバー因子を更に持っていた場合の可能性というのも考えなくてはならないだろう、クリーム色(bbdd)すら生まれるかも知れないという事だ。何という配合になることか!


この仔犬は祖父母、両親ともにレバー・ダルであるが、両親ともに目は濃い黄色であり、両親がbd因子を持つと考えられるため、この仔犬は薄い黄色の目とレバーの鼻を持つ、珍しいクリーム色(bbdd)の例だと思われる。

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トリコロール

黒のトリコロール・パターン 黒/黄褐色/白

レバーのトリコロール レバー/黄褐色/白


これらのダルは同体に三色を持ち、黒/黄褐色/白、もしくはレバー/黄褐色/白の三色である。トリコロールとはレバー・ダルに黒スポットが現れたものではない。トリコロールはA(t)遺伝子の存在によって引き起こされる。正常なスポットを持つダルはA(s)A(s)遺伝子を持ち、黒かレバーのみのスポットである。A(t)遺伝子を2つ持つとトリコロールになる。A(s)A(t)の場合はトリコロール遺伝子を保有する事になる。


縞目模様(Brindled)


じっさいにストライプ模様があり、黒とレバーの混合色ではない。
これはひとつの色というのではないが、淡黄褐色の地色に、暗いストライプのパターンである。この縞模様は正常な黒、もしくはレバー・スポットのダルに見られるものであるが、トリコロールの黄褐色区域に見られる。遺伝学的には縞模様の厳密な遺伝性についての確証はない。


縞目模様トリコロール(Brindled Tri-Color)


縞目模様のトリコロールは“Trindles”と呼称する。これらのトリコロールのダルもまたBrindleの為の遺伝子を保有する。黒スポットはボディ全体を縞目が覆うが、黄褐色区域に縞目が現れる。縞目のトリコロールはトリコロールと同じく、我々が考えているよりも一般的に広まっていると思われるが、普通は黒かレバーによって目立たない。

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モザイク模様

黒のモザイクタイプ


これはトリコロールではない。このタイプはそれぞれ異なった色のスポットをひとつ持つ。これはスポットカラーの突然変異と考えられる。黒スポットのダルに単一のレバー・スポットというのが最も一般的で、これらのダルはレバー因子を持つと考えられる。この写真の黒ダルは、恐らくレモンの“e”遺伝子を保有しているのであろう。

レバー・ダルのモザイクタイプ


左のレバー・ダルは首の部分にオレンジのスポットを持つ。右のレバー・ダルは耳に明るめのオレンジのスポットを持つ。

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2つの濃淡色調を持つタイプ(Two-Tone Spots)



レバーとレモンの濃淡スポット。これはレバーの鼻を持つレモン・スポット特有のタイプであるが、顔のいくつかのスポットはちょっと珍しいものである。これらのスポットは中心が明るく、暗めの(レバー)の縁がある。レモン、もしくはオレンジのスポットを引き起こす遺伝子“e”は黒かレバーの暗い色素(コートの色に関係しているが、鼻とアイラインには関与しない)の出現を許さないが、このタイプの場合は二重の“e”遺伝子が出現しなかった為、暗い色素を完全に取り除けなかった。

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長毛のダルメシアン


これらは実際に純潔のダルである。光沢のある毛質犬種の多くが、時に長毛タイプを生み出す場合がある。長毛の遺伝子を単一で保有する場合は、通常のダルとして現れるが、この遺伝子を単一保有するダル同士が掛け合わされた場合、およそ25%の子孫が長毛となる。またコートの長さへの影響度によって、毛質にもかなりのバリエーションが生じる。

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パッチ


ダルの白地となるs(w)遺伝子(極度に白いPiebald遺伝子)も、時に色が十分でない小さな部分を生じる事がある。通常ダルの仔犬たちは生まれた時は純白(生後約10日後からスポットが出現する)であるが、パッチは生まれた時点で既に存在する。一般的には耳と目の周辺、また尾(尾の付け根の部分)に見られ、ボディの肩の部分に見られる事もある。様々な調査によって、パッチは全体の12%を占めると言われる。
パッチはドッグ・ショウには出陳しないし、繁殖からも外されるが、ペットとして普及しており、服従訓練大会では好成績を収めている。かつてパッチは健康上の問題と考えられて時代があり、アメリカの良心的なブリーダーたちは処分していたが、健康上の問題ではなく美的な問題に過ぎない事が判り、現在では多くのブリーダーがペットとして飼っている。

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参考文献(画像の持ち出しは禁止です)


Animal Genetics  Sue Ann Bowling

Los Colores del dálmata  Andrea Paccagnella